勉強会-①
研究の方法論を学ぶための勉強会に参加した時の記事まとめです。
ここに至るまでの記事はこちら↓
参加したのはどんな勉強会?
- 大学の友人(院生)が主催している、社会学で言う質的調査法の方法論についての勉強会です。
今回は『最強の社会調査入門』なるものとその元ネタとなっている論文を比較して読むというものでした。8人くらい人がいて、それぞれ読んだ感想、疑問点を共有しました。- 勉強会を開くと言ったら人が集まってくる分野は羨ましいですね。
ゲーム研究の集まらなさよ(詠嘆)。私に人徳が無いわけではないです。
- 勉強会を開くと言ったら人が集まってくる分野は羨ましいですね。
- 場所は大学の構内で院生が持っている研究室を使ってました。場合によってはセミナー室(というほど立派ではないけど)を借りたりします。
勉強会のために読んだ本
- 牧野智和(2016)「「ほとんど全部」を読む」『最強の社会調査入門』ナカニシヤ出版 pp.175-186
- 牧野智和(2010)「「就職用自己分析マニュアル」が求める自己とその機能」『社会学評論』vol.61(2) 日本社会学会
本当はもう1組読むべき本があったのですが、時間がなくて断念。
後から発表聞く感じ、そこまで読まなくても良さげではありました。
勉強会に参加した目的
- 研究の方法論について学ぶこと:今回は査読に通った論文の方法論を、裏話を踏まえて学ぶと言うものだったので、下手なそれ系の本を読むよりは記憶に定着しやすいかなと思いました。
- 再現性の高いビジネス参考書、だと思ってもらうのが一番良いかもしれません。
- また、分析対象としているものについてはあまり触れない。
- 可能な限り抽象化して、自分の研究でも使えるような知識を身に付けることを優先しました。
だって沼が深いんだもん。 - 一方参加者の殆どは、分析対象についても深い知見を持っていたので時々話についていけず。まあなんとなく話を聞いていれば、どのように抽象化したらよいかは見当がつきました。
- 可能な限り抽象化して、自分の研究でも使えるような知識を身に付けることを優先しました。
今回学習したこと
課題文献から学んだこと
牧野(2016)(文献の方)から
- 1.事象分析の全体像を描くのに、書籍の分析も有効
- 量的特性の分析をした後に、質的な分析(=印象的な文言を元にした分析)を行うのが良い
- 2.書籍は物によっては小見出しレベルでのデータベースが存在する
- 「自覚的な論点を扱っている」として扱うことができる
- 3.量的特性の分析を行う手法として、使用されている要素のリストアップ・カウントが有効
- 4.ある程度分析対象を絞ることも可能:「読む意味」がないとどれだけ言うことができるかが基準
- 今回の例であれば、「版が変わっても内容がそこまで変わらない」というのを理由にカットしていました
牧野(2010)(論文の方)から
- 5.論文内は次のように書籍の分析を行うことを正当化している
- 1.事象を研究として扱うことの価値を述べる
- 2.先行研究の問題点を挙げる
- 3.先行研究が抱える問題点を解決するためのポイントを挙げる
- 4.それらのポイントを満たした研究の枠組みを提案
- 5.その研究枠組みにふさわしい資料として、当該書籍の分析を正当化
- その過程で、すでに使用されている資料についても言及し、新しく扱うことの価値を高めている
- 6.文献の絞込をどう行ったか
- A.使用したデータベース(以下DB)
- 「本やタウン」(→現在は「ホンヤクラブ」に改称(http://www.honyaclub.com/))
- 主体:日本出版販売株式会社(日販) →出版取次の会社。出版社から出た大体の本はここに集まると予想される。 →逆に言えば、ここに集まらない本は、こことの関係が良くないか、弱小出版主体が出した本?
- これらに加えて、NDL(国会図書館)のデーターベースや、その他の書籍検索データベースを使用しているらしい
- トーハンも「e-hon」(http://www.e-hon.ne.jp/)というDBを用意しているらしいが、このDBは2000年11月公開。前身の「本の探検隊」は1996年2月公開(Wikipediaより)
- 「本やタウン」(→現在は「ホンヤクラブ」に改称(http://www.honyaclub.com/))
- B.DBをどのように使用したか:見出し及びタイトルレベルで検索をかける
- C.読む意味がないことの正当化をどのように行っているか
- 『最強の社会調査入門』で書いて有ることと同じ
- A.使用したデータベース(以下DB)
- 7.作業課題をリストアップする時に、①抽象的な分類の下に②具体的な課題を掲載したほうが良い
- 作業するときには具体的な課題を抽出した上でそれらを分類
- 分類の際は、「出現傾向や特性」を基準とする
- 特性:「中核的カテゴリー」の概念に依拠するらしい
- 出現傾向:どの年代に出てきたか
勉強会で学んだこと
- 8.分析を平板化が問題となる水準
- A.そもそも「平板化」とはなんぞや:事象との相互作用を行わない形でなされる理論の適用
- B.「分析を平板化」することで何が起きるのか:既存の理論が抱える難点が保存される
- そしてそれにより、事象を適切に説明できない自体が発生する
- 9.「資料内在的に把握する」という行為の具体的内容
- :大量の資料を読み比べながら、そこから全体図を描き出すこと
- これで君もカッコイイワード「資料内在的把握」が使えるように!
- 10.ネットの情報資源についての言及を回避する方法
- p.154で「インターネットの普及に伴う同種情報の拡散」と書いている。ここで暗黙的に、網羅的な分析になる、としていると思われる
- 同時に、ネット情報を網羅的に調べたらまた異なる結果が出てくる可能性もある
- p.154で「インターネットの普及に伴う同種情報の拡散」と書いている。ここで暗黙的に、網羅的な分析になる、としていると思われる
勉強会後も残った疑問
- 11.平板化=(安易な)還元論の学術的な問題点はなにか
- 12.文献検索に使えるデータベースにはどんなものがあり、どのようにして使うとよいか
- 13.「中核的カテゴリー」とは何か