牧野智和(2010)「「就職用自己分析マニュアル」が求める自己とその機能」『社会学評論』vol.61(2) 日本社会学会
牧野智和(2010)「「就職用自己分析マニュアル」が求める自己とその機能」の読後レジュメです。
大学で研究の方法論を学ぶ勉強会に参加しているのですが、そこで今度扱う文献です。
牧野氏は『最強の社会調査入門』14章で文献調査の手法について語っているのですが、その手法を用いた具体例が本論文となります。
同論文は「自己分析」が就活で果たす機能やその問題点についても述べているので、その辺に興味関心がある方はどうぞ。CiNiiで読むことができます。
この文献を読む際の着目点は、『最強の社会調査入門』14章「「ほとんど全部」を読む」より引っ張り出しています。
『最強の社会調査入門』14章についてまとめたページは↓です。
こちらも合わせてご覧ください。
修正履歴
- 2016-09-22 疑問点で挙げている箇所の該当ページが間違っていたので修正(p.61 → p.152)
「「ほとんど全部」を読む」を読んだ時点での不明点、論文を読む際の期待点
『最強の社会調査入門』14章「「ほとんど全部」を読む」を読んだあと、以下の不明点・期待点が残りました。
本論文を読むに当たっては、以下に着目して読んでいきたいと思います。
- 1.論文内では、どのように自己分析本の分析を行うことを正当化しているか
- 2.紹介している手法を、具体的にどのように用いているか
- A.使用したデータベース(以下DB)
- B.DBをどのように使用したか
- C.要素のリストアップ方法:プレ分析シートをどのように作ったか
- D.読む意味がないことの正当化をどのように行っているか
上記の中で解決した点
上で挙げた点のうち、殆どは本論文を読むことで解決しました。
1.論文内では、どのように自己分析本の分析を行うことを正当化しているか
論文を読む限り、以下のような手続きで正当化しているようでした。
- 1.事象を研究として扱うことの価値を述べる
- 2.先行研究の問題点を挙げる
- 3.先行研究が抱える問題点を解決するためのポイントを挙げる
- 4.それらのポイントを満たした研究の枠組みを提案
- 5.その研究枠組みにふさわしい資料として、当該書籍の分析を正当化
- その過程で、すでに使用されている資料についても言及し、新しく扱うことの価値を高めている
2.紹介している手法を、具体的にどのように用いているか
基本的に論文中に記載がありましたが、後述するデータベースの使い方について、ちょっと不明な点がありました。
また一部、知識不足でわからない点もありました。これについては勉強会で聞いてみたいと思います。
- A.使用したデータベース(以下DB)
- 「本やタウン」→現在は「ホンヤクラブ」に改称(http://www.honyaclub.com/)
- 主体:日本出版販売株式会社(日販) →出版取次の会社。出版社から出た大体の本はここに集まると予想される。 →逆に言えば、ここに集まらない本は、こことの関係が良くないか、弱小出版主体が出した本?
- これらに加えて、NDLのデーターベースやその他の書籍検索データベースを使用している
- トーハンも「e-hon」(http://www.e-hon.ne.jp/)というDBを用意しているらしいが、このDBは2000年11月公開。前身の「本の探検隊」は1996年2月公開(Wikipediaより)
- つまり、書籍の選定に当たっては「本やタウン」を軸にした、ということ
- 「本やタウン」→現在は「ホンヤクラブ」に改称(http://www.honyaclub.com/)
- B.DBをどのように使用したか:「自己分析という語をタイトル・内容に含む」(p.153)書籍を検索
- C.要素のリストアップ方法:プレ分析シートをどのように作ったか
- 特に見当たらず。
「「中核的カテゴリー」の概念に依拠」(p.165)と注に記載されている。
- 特に見当たらず。
- D.読む意味がないことの正当化をどのように行っているか
- 『最強の社会調査入門』で書いて有ることと同様。
それ以外に読んで得られた内容
- 作業課題のリストアップする時に、①抽象的な分類の下に②具体的な課題を掲載している
- 作業するときには具体的な課題を抽出した上でそれらを分類
- 分類の際の基準は、「出現傾向や特性」
- 特性:「中核的カテゴリー」の概念に依拠
- 出現傾向:どの年代に出てきたか→年代ごとの推移を見るのに使用
論文を読んでいる際に出てきた疑問点
論文を読んで解決した疑問があった一方、新たに出てきた疑問もありました。
この辺の疑問は次の勉強会の時にぶつけてみたいと思います。
- 3.分析を平板化してしまうこと自体の問題点は何か?(どの水準で問題となる?)
- 4.「資料内在的に把握できる」(
p.61→ p.152)というのはどういうことか? - 5.ネットの情報資源について言及がないのは大丈夫なのかしら:「暗黙の了解」で通っているのか?
- 6.実際に「自己分析」で検索してみたけどその通りの結果が出なかった。どのように803冊という結果を出したのか?
- 7.「中核的カテゴリー」とは何か