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ゲームしている人のブログ

デジタルゲームとその研究に関することを書いていきます

ハーフリアル紹介-3 ルール(3)

『ハーフリアル』について、読後のレジュメをまとめました。
学生の人にはゲーム研究の入り口として、また社会人の人にはゲーム研究を実務に活かす切り口として、参考になれば幸いです。

ここでは、「3 ルール」の章について紹介します。
今回紹介する内容は pp.116~154 までの内容です。



読んだところの概要・感想

 すいすい読めるなーと思って最後まで読んでみたはいいものの、結構まとめるのに苦労しました。  まとめる範囲自体これまでより広くとっていたのと、書いた時の意図がうまく読み取れないところが多かったです(書き手の問題にしろ、自分の能力不足にしろ)。
 きっちり無駄なく記述する能力と、記述に意味を見出す能力両方の必要性を読んでて感じる箇所でした。てか内容全く関係ないですね。

 内容としては、先述したとおり結構楽に読むことができました。特にゲームを遊んで、僅かなりとも分析をしたことがあるのであれば、同意できるところは数多くあるのではないでしょうか。
 挑戦課題をどう設計したら良いのか、というところが読んでて曖昧に感じたのが少々残念です。それ自体は本書の目的からは外れるので、別のところで答えを探していきたいと思います。

読んだところの内容

「ゲームプレイ」の定義について

 ユールの議論で言えば、①ルール、②「プレイヤーの努力」、③プレイヤーの能力とレパートリーの三者による相互作用の結果
 故に、ゲームデザインの目的は「面白いゲームプレイ」の相互作用を生み出すようにルールを設計することとなる。
 本文中では、『Quake III Arena』と『Counter-Strike』を例に、これらの定義を導き出しています。

  • ルール(あるいは挑戦課題
    • ②努力への作用:努力の方向性を定める
    • ③能力・戦略への作用:磨くべき能力と戦略レパートリーを定める
  • ②「プレイヤーの努力
    • 本文では明確に言及されてないが、p.51 周辺にある定義を鑑みて、ここでは「プレイヤーの努力」というタームがふさわしいと判断。
      該当箇所は↓
      • 3章中の記述:プレイヤーが目標を目指すこと(p.121)
      • 定義:ゲームの結果に影響を与えるために、プレイヤーは努力する(p.51)
    • ①ルールへの作用:心理的効果として、暗示的なルールを生み出す(例:個人志向、チーム志向)
    • ③能力・戦略への作用:自らの能力を磨き、より良い戦略レパートリーを増やそうとする
  • プレイヤーの能力と戦略レパートリー
    • ①ルールへの作用:つまらないゲームプレイを生むものを修正させる(バランス調整)
    • ②努力への作用:特定の能力・戦略を洗練させるよう促す
  • →そしてこれらの相互作用は創発的なものであるため、ルールを固めるのにはテストプレイが必要である
  • それ以前の定義(一般的な定義、及びラウスの議論)との違い
    ゲーム自体が持つ性質として捉えるのではなく、プレイヤーの特性も考慮に入れた相互作用の結果として捉えていること

(「相互作用」と聞いてそれぞれ互いにどう作用するかについて、ここでは明示的に書いてますが、本文中だとそこまで明確に書いてません。あくまで主観的な解釈なのでご了承ください)

挑戦課題の質を判断する基準について

  • シド・マイヤーの議論:解決戦略がもつ質的側面から説明
    • ゲームプレイ=興味を引く選択肢(interesting choices)の連鎖(p.123)
      • 1.個々の選択肢は、どれも最善であってはならない。
      • 2.個々の選択肢は、良さの点で互いに同等であってはならない。
      • 3.プレイヤーが当の選択肢をよく把握したうえで選択することができなければならない。
        (『ハーフリアル』p.123 より(孫引き))
  • マーセル・ダネージの議論(『パズル本能』):適用可能な解決枠組みの側面から説明
    • 楽しさの種類:思考的か、情動的か
      • 思考の美的感覚(p.124、孫引き)(緊張感や不安の解消、パズルの楽しみ)
      • 情動の美的感覚(p.124、孫引き)(カタルシス=精神の浄化、芸術の楽しみ)
    • パズルの種類:計算して解けるパズル or 洞察力を必要とするパズル
  • ユール自身の議論:(突き詰めると、)適切な挑戦課題は個々人によって異なってくる
    • 挑戦しがいの有無=質の良し悪しは、すべてのプレイヤーに共通するものではない
    • なぜなら、①解決に使用できる道具(≒レパートリー?)、及び②そもそも期待される課題として認識されるかどうかは、人によって異なるから
      • ある意味当たり前の結論ではあるが、逆に面白いゲームを成立させる手がかりの一つとして、「参加者がすべて解決に必要な道具を確実に入手できるか」、また「こちらが思う通りの解決手法として認識させるだけの材料は揃っているか」と考えるための視点を与えてくれてもいる?

「適切な」挑戦課題の基準を作ることの難しさ

  • 「挑戦」に焦点をあわせてゲームデザインを考える利点は何か?
    チクセントミハイフロー理論の枠組みを利用できること
    • フロー理論の枠組みで言えば、やりがいのある課題がゲームの楽しさにつながる
  • しかし、フロー理論の前提〈やりがいのある挑戦課題〉以外のところでも、楽しみは生じうる
    • →例として Myers(1992):繰り返しも魅力的になることがある
  • プレイヤーの経験・楽しみに影響を与えるものは数多くあるため、個々の挑戦課題のみからは楽しみを説明できない
    • →挑戦課題の量を調整することは、ゲーム全体のテンション(=ゲームの激しさ(intensity)(p.150)を調整することと見なした方が良い
      • これはつまり、システム面だけではゲームの面白さを評価/説明できない場合がある、ということ?
        • そう考えると、(ゲーム誌とかで)ゲームの面白さを評価/説明する新しい切り口として、ルールとフィクションの相互作用の説明を読むのも面白そう
  • なお、挑戦課題の解決に使用できる基本的レパートリーが固定的なのは慣習に過ぎない

ゲーム中における挑戦課題の配置設計について

  • 前提:プレイヤーはゲームの中でスキルを向上させていく
    • ゲームはそれをプレイするプレイヤーを変化させる(p.129)
      • 挑戦課題をクリアするために必要となる手法を要求することで、プレイヤーのスキルを向上させる
    • ニューウェルとローゼンブルームの議論①:実践はスキルの向上と密接につながっている
  • まず、そのスキルはどのように向上していくのか?
    • ハイダーとフレンシュの議論:スキル獲得をもたらすものは何か?
      • ①作業構造の質的変化:作業中で扱う情報量の削減による
      • ②単体作業の遂行効率向上
      • ③作業全体の遂行効率向上
      • ④①~③の組み合わせ
    • →ゲームの中では、チャンク化→手法(method)獲得の側面から考えるのが良い
      • 作業要素チャンク化の理論:基本的要素を組み合わせたより高次な要素を作成することで、要素を個別に処理するよりも短い時間で処理できる
      • →プレイヤーは手持ちのレパートリーと戦略を拡張させるという認識
  • スキルを向上させるために、ゲームはどのような挑戦課題を用意すればよいのか?
    • 1.プレイヤーに攻略手法のレパートリーを増やす/磨かせるよう促すもの
      • プレイヤーのスキル水準に合わせてものが望ましい
    • 2.特定のルーチンのみでクリアできないようになっているもの
  • →では用意した挑戦課題を、どのように提示すればよいか?

進行型のゲーム(デザイナーが展開を強固に制御できるゲーム)の場合

  • プレイヤーの思考、及びその時点で持ち合わせているであろうレパートリーを予測した上で課題をデザインする必要がある
  • レパートリーへの働きかけ方:特定手法を目立たせる課題を出した後、その手法が有効にならない課題を出すことで、レパートリーの拡張を促す

創発型のゲーム(ゲームが自動的に課題を生成するゲーム)の場合

  • 意外性を持つ課題=間違ったレパートリーを使用させる課題をもたらす
    • なおこの意外性は、どうしてもプレイヤーの認識に左右される
  • マルチプレイの場合でも同様に課題が生成される=引っ掛けようとするプレイがありえる
  • 挑戦課題を自動で生み出す標準的なパターンについて
    • パターンを集める試みは存在するが、安定したパターンの記述を行うのは難しい
    • パターンの例:三すくみ(あるいは直交軸によるユニット差別化(p.141)、)、自拠点(あるいは守るべき持ち分(p.141))の存在、チョークポイント(あるいは戦略上の重要ポイント)の存在

挑戦課題の調整はどう行ったらよいか?

  • 難易度を調整する局面を持ち込むことで、ある程度個々のプレイヤーに合わせた調整は可能
    • 調整する方法については、(ビデオゲームの範疇で言えば)①難易度選択機能の設置、または②セーブ機能の設置がありえる
      • 「セーブ」の定義:ゲームセッションの状態をいったん保存して、あとでそこから再開できるようにするもの(p.145)
  • 既存のゲームデザイン(とそれに伴う挑戦課題)の議論については、挑戦課題自体の良し悪しの問題ではなく、プレイヤーがゲームに何を期待するかの問題(整合性の問題)を考える議論として位置づけた方が適切
    • その上で、整合性を整えるための調整を行うべき、ということ?

疑問点について

前章より持ち越した疑問点

  • 4.ルールとフィクションの相互作用の詳細
  • 9.中間領域が持つ生産性の詳細
  • 11.「自己目的」性がゲームの定義に使用できない理由
  • 21.ゲームルールの明確性が議論の対象となる理由
  • 22.ルール=ソフトウェアを「内蔵」しているハードウェアの議論の射程
  • 24.ルールが「可変」であることと「柔軟」であることの差異
  • 25.帰結が「取り決め済みである」ことと、「取り決め可能でない」ことの差異
  • 26.ルールと実践の相互作用と社会集団の形成はどう関係するのか?
  • 28.情報量低減(information reduction)とは何か
    • 1.情報量低減(information reduction)の全体像は?
    • 2.ルールの理解は、プロセスのどこの一部をなしているのか?
    • 3.取り上げることにどういった利点があるのか?

解決した疑問点

26.ルールと実践の相互作用と、社会集団の形成は、どう関係するのか?

 3章のどこかで書くよー、とありましたが、pp.121-122の「ゲームプレイと社会的側面」の節が該当箇所ですね。
 この節を丁寧に読む形で問いを解決させると、以下のようになるかなと。

  • プレイヤー同士の協働が必要となるルール(=挑戦課題)が存在する時
    • (1.ルールにより、プレイヤー間のコミュニケーションが活性化し、課題をクリアするための方略(戦略)が(自生的に)形成される)
    • 2.協力して課題をクリアするために、戦略の共有・洗練が必要となってくる
    • 3.戦略の共有・洗練を行う媒体として、コミュニティ(wikiなど)→社会集団を作る動機が出て来る
    • 4.戦略が共有されることが、コミュニティに参加するための動機となる

 しかしこの解答だと、ルール(1)の記事で書いた解答とうまく接続ができないですね。
 それぞれで想定されている集団の規模レベルやまたそれぞれ扱っている局面が異なっているため、単純に接続することは難しそうですが、時間があれば考えてみたいと思います。  またソロプレイのゲームの場合でも、たいてい攻略サイトとかが作られますが、それらについて特に言及が無いのも気になりました。
 これはまた、マルチプレイヤーゲームとは別の次元で考えるべきことなのでしょうか。

新しく出てきた疑問点

 院進先で学習科学を扱う都合上、それと関連した疑問が今回読んだところで結構出てきました。
 解決自体はしばらく先になるとは思いますが、いずれ考えることになると思います。

  • (本書外の疑問)29.数学の問題集とかではよく見るやり方だけど、うまくレパートリーを拡張できない場合=応用問題が解けない場合もある。その場合の対処策は?
    • 離脱点となりそうな詰むポイントを、どのように回避するかのヒントになりそうだなー、という意味での疑問
  • (本書外の疑問)30.レパートリー拡張の仕方にも種類があるのでは?
    • あるレパートリーの応用、特定のレパートリーとの組み合わせ、当該レパートリーが持つ限界の理解などなど
    • この辺理解できれば、ゲーム開発の場においてより厳密な議論ができるのでは、という意味での疑問
  • (本書外の疑問)31.ゲームデザインのパターンを安定して記述することが難しいのであれば、それは問の立て方が間違っているのではないだろうか?
    • 「答えるのが難しい問いは、問の立て方が間違っている時がある」とゼミで聞いての疑問
    • 仮にそうだとして、どういう問の立て方をした上で記述・収集するのが良いのだろうか?
  • (本書外の疑問)32.課題の難易度調整について、教育学(教育工学)の知見から得られるものは無いか?
    • すでに知見が集まっているところがあるのであれば、その成果を転用できたらいいなあ、という意味での疑問
    • 院試勉強時に「プログラム学習」といった言葉を目にしたので、そこから掘り下げていくのが良いかなあ、と思ってます
  • (本書外の疑問)33.フローにおける「楽しみ」の定義とは?
    • 「楽しみ」という言葉は無批判に=厳密な定義付けを行わずに使ってしまいがちな言葉であり、今後議論に参加できるようにするためちゃんと知っておきたい、という意味での疑問
  • (本書外の疑問)34.p.151の「慣習」というのは、どの次元まで有効な「慣習」なのか?
    • その慣習がハードウェア的な制約(例えば記憶容量など)に基づくもので現在は形骸化しているのか、それとも面白いゲームデザインをするに辺り未だ有効な慣習なのか(例えば一貫性のないレパートリーのゲームは面白く感じられない、開発にあたって意識の統一がし易いなど)
    • もう少し厳密にこの慣習についての見識を深めることができたら、ある意味「知的に」ゲーム開発を行う手がかりになりそうだなー、という意図での疑問
  • (本書外の疑問)35.ルールと実践の相互作用と社会形成の関係について、以下の場合にも対応できる形で説明をするとしたらどのようになるだろうか?
    • 参加者が自らルールを定められるゲームを、個人で遊ぶ場合
    • 参加者が自らルールを定められるゲームを、複数人で遊ぶ場合
    • 参加者がルールが所与のものであるゲームを、個人で遊ぶ場合
    • 参加者がルールが所与のものであるゲームを、複数人で遊ぶ場合
    • →現在部分的にしかみることができておらず、そこに気持ち悪さを感じての疑問です。
  • (本書外の疑問)36.なぜゲーム開発は派手さときらびやかさの方向に進化していったのか?
    • 「最近の(特に日本の)ゲームはグラフィックスに力を入れている」というのは(ちょっと前であれば)ある程度共有されている(いた)認識だとは思うのですが、ではなぜそのような方向性に進んだのでしょうか。
    • 仮に面白さの方を追求する(=そちらの方に金をかける)ようになったとしても、グラフィックスの方により力を入れていた時の必然性を理解しておかないと、また揺れ戻しでグラフィックスの方に力を入れることになる、と私は思います。

疑問点まとめ

  • 4.ルールとフィクションの相互作用の詳細
  • 9.中間領域が持つ生産性の詳細
  • 11.「自己目的」性がゲームの定義に使用できない理由
  • 21.ゲームルールの明確性が議論の対象となる理由
  • 22.ルール=ソフトウェアを「内蔵」しているハードウェアの議論の射程
  • 24.ルールが「可変」であることと「柔軟」であることの差異
  • 25.帰結が「取り決め済みである」ことと、「取り決め可能でない」ことの差異
  • 28.情報量低減(information reduction)とは何か
    • 1.情報量低減(information reduction)の全体像は?
    • 2.ルールの理解は、プロセスのどこの一部をなしているのか?
    • 3.取り上げることにどういった利点があるのか?

本書外の疑問点

  • (本書外の疑問)29.レパートリーを拡張できない場合の補助はどのように行うべきか?
  • (本書外の疑問)30.レパートリー拡張にはどのような種類があるか?
  • (本書外の疑問)31.ゲームデザインパターンを記述する際の望ましい問の立て方は?
  • (本書外の疑問)32.課題の難易度調整の手法にはどのようなものがあるか?
  • (本書外の疑問)33.フローにおける「楽しみ」の定義とは?
  • (本書外の疑問)34.p.151の「慣習」はどの程度有効な「慣習」なのか?
  • (本書外の疑問)35.ルールと実践の相互作用と社会形成の関係を詳細に説明できるか?
  • (本書外の疑問)36.ある時期にゲーム開発が見た目の方に注力したのはなぜか?

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