ハーフリアル紹介-序章
『ハーフリアル』について、各章ごとの簡単な紹介をまとめました。
学生の人にはゲーム研究の入り口として、また社会人の人にはゲーム研究を実務に活かす切り口として、参考になれば幸いです。
ここでは、「1 序論」の章について紹介します。
この章で得られる内容
タイトル「Half-Real」の意味は?
- ビデオゲームは、現実に設定されているルールの下で、内部にある虚構的目標の達成を目指すという2つの面を持つということ
- ここから、ビデオゲーム自体の分析にあたり、ルールの側面から分析するというアプローチと、フィクションの側面から分析するアプローチ、及び両者の側面から分析するというアプローチがありえる
ゲームの定義について
- 一般的なゲームの定義として、古典的ゲームモデルがある
- この古典的ゲームモデルの定義から、ビデオゲームがどのように逸脱しているかをみるのが本書の目標の一つ
- ゲームをルールの塊としてみたとき、そのプレイはプレイヤーに挑戦課題を与え、解決のためにスキルの向上を促す
ゲーム研究の展開について
- ほかの目的のためのゲーム=ほかの事柄を研究する際の事例として、ゲームを利用
- それ自体のためのゲーム=非電子ゲームと遊びの研究
- ゲーム研究の「成立」:成立後も対立が存在
研究にあたりゲームをどう見るべきか
- 楽しい理由:結局は一言ではいい表せないが、時がたつにつれて変わりうる→から、細かく論じることができる?
- 研究の視野を狭めるものがあることにも注意すること
- 例1:ゲームを低俗とする見方(ゲームの芸術的価値を論じる際の障害)
- それ自体は素朴な考えゆえ、単純には使用できない(例えば、ゲームのプレイヤーは本当に利害関心を持ってゲームをプレイしているのか?)
- 例1:ゲームを低俗とする見方(ゲームの芸術的価値を論じる際の障害)
読んだ時点での不明点、次章以降への期待点
- ビデオゲームの定義を考えることは、
- ①学術的にどんな意味がある(=どう言語化できる)?
- ②実践面にどんなご利益をもたらす?:研究価値につながる疑問
- その一環として、ビデオゲームと古典的ゲームモデルとの距離を見ることは、どのような意味がある?
- 古典的ゲームモデルはどのように組み上げられているのか?
- 進行型が比較的新しいジャンルであるということの証左:ビデオゲームの新しさを見るための疑問
- ゲームジャンルとして本当に新しいのか? ゲームブックとかとはまた違うのか?
- ルールとフィクションの相互作用とはどういうものなのか
- ルールはフィクションにどのような影響をあたえるのか?
- フィクションはルールにどのような影響をあたえるのか?
- 両者の影響の与え方は、どのように観察されうるのか?
- ゲーム研究とゲームデザインはどのように結びつきうるのか?
- 予想としては、研究で得られた知見を、その時々の価値判断で適用する・しないを決めていくのだろうか?
- (一般的な疑問)実際のゲームをどのような形式で、研究内に取り上げているのか?
- ゲーム研究と趣味のゲームプレイをどのように接続させられるのか?
- ゲームの楽しさを細かく論じることができるというのはどういう意味があるのだろうか?
- 細かく専門領域を作ることができるとして、最終的にそれらをどう理論的に結びつけるのだろうか?
- 非電子ゲームの研究は、どの程度ビデオゲームの研究に援用されているのだろうか?
その他コメント
- ゲーム理論がゲームの一般的な研究を含んでいるらしいので、その辺も先行研究の手がかりとして使えるかも
- 「物語論的転回」(p.27)とはなにか?
→曰く、「この転回以降、物語を〈われわれが世界に意味を見いだしたり構造化したりする基本的な仕方〉としてとらえる見方が一般的になった」というが、
- その「転回」はどのようなものか? 学術的裏付けは? 起源はどこにあるのか? →一般的な見方であるのはありがたいけど、どのくらい学術的な裏付けが取れているのかわからないと、下手に研究に応用できない
- どのようにこの「転回」がなされたのか? 起源と転回が起きた期間はどのくらい? その期間はなぜ存在する? →「転回」が起きたということは逆に「起源からその間に転回が起きなかった」ということ。そこから「物語論」自体の限界や、反対に外的要因が見えてくるのでは?